関係人口とは?関係人口を増やす9個の自治体の取り組みを基に解説

地域創生のキーワードとして、近年注目を集めているのが「関係人口」という言葉です。
人口減少や高齢化が課題となる地方では、地域づくりの担い手として関係人口が活躍することが期待されています。
この記事では、関係人口の意義、関係人口の増やし方の具体的な事例などを紹介しています。

この記事でわかること
  • 関係人口と定住人口、交流人口の違い
  • 関係人口を増やす具体的な方法
  • 地方自治体による関係人口増加事例
こんな方におすすめ
  • 関係人口を増やすためにはどうしたらよいか知りたい
  • 地方社会の人口減少に悩んでいる
  • 関係人口増加の具体例を知りたい
目次

関係人口とは

「関係人口」とは、観光客以上・定住者未満として、ある地域に深い関わりを持つ人々のことを指す概念です。

地域内にルーツがある人や、地域を頻繁に行き来する人、過去の勤務や居住などで関わりがある人など、地域外からやってくる人材を関係人口という言葉で表します。
地方圏では人口減少と高齢化といった深刻な課題に直面しているため、関係人口の存在は地域の持続的な発展にとって重要であり、地域の未来を明るくする潜在的な力を秘めているといえます。

定住人口や交流人口と、関係人口との違い

次に、「定住人口」と「交流人口」について解説します。
地域と人々の関わりというものははっきりと線引されたものではなく、下の図のようにグラデーション状になっています。

定住人口:地域に居住している人

「定住人口」とは、移住した人も含め、その地域に住んでいる人々のことです。

地域社会では、さまざまな問題により定住人口が減少している傾向が見られます。
人口減少と高齢化は、地方圏における最大の懸念といってもよいでしょう。

交流人口:一時的な訪問者

「交流人口」とは、地域外からの短期滞在者のことを示す言葉です。

旅行者や観光客、出張や通学の目的で滞在する人などが交流人口に含まれます。
関係人口と交流人口の大きな違いは、地域への関わりの深さです。
関係人口は地域に対して特別なつながりや愛着を持つ人々を指すのに対し、交流人口は一時的に地域を訪れる人々を示します。
交流人口は地域そのものに対しては特別な愛着を持っていない場合が多く、滞在期間が限定された短期的な関わり方が特徴です。

関係人口を増やす主な2つの方法

関係人口は、地域において重要な役割を果たすだけでなく、地域の内発的な発展やイノベーション、新たな価値の創造にも寄与します。
ここでは、地域全体の活性化にもつながる関係人口を増やす方法を2つ紹介します。

オンラインイベントや説明会を開催する

まずは地域の魅力や情報を発信することが大切です。

オンラインイベントは、地域の特産品や文化、観光地などの魅力をオンライン上で体験したり、情報を共有する場です。
例えば、オンラインツアーを開催して地域の名所を案内したり、地元の伝統行事や祭りなどをオンラインで実況することがあります。
また、オンライン説明会は地域の特性や暮らしの魅力、ビジネスの機会などについて詳しく説明する場です。
特産品や産業、住宅事情などの情報を提供し、関心を持った人々に対して地域への移住や訪問の魅力を伝えます。
さらに、地域の活動や取り組みについても紹介し、関係人口が地域と交流したり参加する機会を提供することができます。
オンラインイベントや説明会を開催することで、時間や場所の制約を超えて多くの人々にアプローチすることができるでしょう。

関係人口の受け入れを行う

関係人口は多様な職種の人々から成り立っています。
地域がさまざまな専門性やスキルを持つ人々を受け入れることは、経済や文化の多様性を広げるだけでなく、新たなビジネスやイノベーションの創出にもつながる可能性があります。

ワーケーション

ワーケーションとは、「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた言葉で、仕事と休暇を取り合わせた形態で行われる働き方となります。
ワーケーションは、通常のオフィスや自宅ではなくリゾート地や観光地などに長期滞在をして仕事を進めることが特徴です。
特に自営業者やフリーランス、リモートワーカーなどの柔軟な働き方を選択する人々にとって、魅力的な選択肢となっています。

二地域居住

二地域居住とは、個人が都市部と地方圏の2つの地域に居住拠点を持ち、それぞれの地域で生活を行うというライフスタイル。
一定の期間や頻度で都市部と地方圏を行き来し、両方の地域で日常生活や仕事を行うことが特徴です。
二地域居住は、都市部で仕事や利便性を得、地方圏で豊かな自然環境やのんびりとした生活を送るという両方のメリットを享受することができます。
また、地方圏での滞在を通じて地域の人々との交流を深め、地域社会にも積極的に関わることも可能です。
二地域居住は、都市と地方の魅力をバランス良く取り入れながら、充実した生活を実現する手段の一つとして選ばれています。

週末移住 / 季節移住

平日は都会での仕事に従事し、週末だけを地方で過ごすという週末移住や、夏は避暑地で過ごし、他の季節は温暖な地域へ移動するといったような季節移住という暮らし方もあります。
このような暮らし方を選択する人々は、「完全に移住することは難しいけれど、地方の暮らしを実際に経験してみたい」「地域のまちづくりに参加したい」といった理由から、新しい移住スタイルを模索していることが多いようです。

リゾートバイト / 季節労働

普段は都市部で生活を送りながら、限られた季節だけ地方圏でリゾートバイトを行う人々も存在します。
地方でのリゾートバイトは住み込みの形態をとることが一般的であり、季節や需要に合わせて一時的な雇用が提供されるため、スキーやサーフィン、ダイビングなど、自身の趣味や特技を活かしながら働くことができるという利点があります。
また、農作物の収穫時期など大きな労働力が必要な時期に一時的に地方圏に居住し、時期が終わると都市部に戻るという季節限定の働き方をする人もいます。

ノマドワーク

ノマドワークとは、場所に縛られずに仕事をすることを指し、通常はインターネットを活用してリモートで業務を行います。
ノマドワーカーとして活動する人々は、都市部や地方圏を自由に移動しながら仕事をしており、さまざまな地域のコミュニティやイベントに参加することができます。
このように、さまざまな働き方と関係人口は、地域と個人の間で相互に利益をもたらし合う関係性を築くことができます。
地方圏は新たな刺激やアイデアを受け取り、それによって地域の魅力を高める一方で、働く人々は地域での滞在や交流を通じて、豊かな経験と仕事の機会を得ることができる利点があります。

地方自治体による関係人口増加事例

地方公共団体の中から、関係人口増加に成功した事例を9つ紹介します。

千葉県匝瑳市「マイ田んぼ・マイ畑」

参照元:「SOSA Project

千葉県の匝瑳(そうさ)市では、「ローカル化」をキーワードにコメ作りやDIY等を通じて、「SOSA Project」という取り組みを行っています。
「マイ田んぼ・マイ畑」では、人工物が視野に入らない美しい里山にある小さな区画の田んぼで、お米を田植えから収穫、持ち帰りまで一貫して行うことが可能です。
また、畦で大豆を育てて味噌や醤油の自作を後押ししたり、野草や山菜採りのほか、里山維持のための草刈りなどもスタッフとともに行います。
隣接した里山ではスモールハウスやトイレなどの設備、歩道や階段などの整備修繕を通じて、大工作業や土木作業などのDIY技術を体験し習得することも可能です。
また、移住希望者には空き家を斡旋するとともに、地元とのつなぎ役にもなってくれ、移住や二地域居住の促進につなげています。

北海道上士幌町「ふるさと納税」

参照元:「北海道 上士幌町

北海道河東郡にある上士幌(かみしほろ)町は、半世紀以上にわたって減り続けた人口を、ふるさと納税を活用した子育て支援策によって増加に転じさせた成功例を持つ自治体です。
また、関係人口を増やすための取り組みとしては、クラウドファンディング型のふるさと納税で寄付者を募り、リターンとして首都圏で開催される交流イベント・セミナーへの招待を用意したり、寄付者の中から移住体験モニターを募集して、継続的に上士幌町とつながりを持つ寄付者を集めています。
このようなイベントは本来移住が前提のアプローチとなっていましたが、ふるさと納税のリターンとしてならば受け入れられやすい点が特徴です。
結果として移住には至らなくても、多様な形で地域との交流を深めることで上士幌町に関わり続ける応援者、つまり関係人口を増やすことにつながっています。
上士幌町の取り組みは、ふるさと納税を通じて関係人口を増やすだけでなく、地域の魅力の向上や地域の成長にも寄与しています。

島根県邑南町「廃線を使ったPR」

参照元:「邑南町観光協会

島根県邑南(おうなん)町では、廃線となったJR三江(さんこう)線の旧宇津井駅を活用したPR活動を行っています。
旧宇津井駅は、その美しい景観から「天空の駅」として知られており、観光スポットとしても人気を集めていました。
そこで邑南町はこの駅の存在を活かし、鉄道ファン向けのイベントや観光情報の発信、地域課題を住民とともに考える講座を開催。
これらのPR活動によって、邑南町は廃線を活かした魅力的な観光地としての知名度を高め、関係人口の増加に成功しています。

香川県・岡山県「こえび隊」

参照元:「瀬戸内国際芸術祭

瀬戸内海に広がる12の島と2つの港を舞台に、3年に1度開催される現代アートの祭典が瀬戸内国際芸術祭です。
香川県と岡山県では、この瀬戸内国際芸術祭の運営やプロモーションに携わる「こえび隊」と呼ばれるボランティアサポーターが活躍しています。
こえび隊のメンバーは、作品制作の手伝いや展示の設営、イベントの運営など、芸術祭に関連する様々な活動を行っており、また、観光客や来場者との交流を通じて、地域の魅力や文化を紹介する役割も担っています。
この活動に参加することで、こえび隊のメンバーは芸術祭を通じた貴重な経験を積むことができると同時に、地域の文化や芸術に触れながら、地域住民との交流や地域課題への理解を深める機会も得らるのがメリットです。
この取り組みにより、瀬戸内国際芸術祭は多くの人々に愛され、関係人口の増加に成功しています。

奈良県明日香村「あすかオーナー制度」

参照元:「あすか夢耕社

奈良県明日香村では、地域の農業振興と若者の農業志向を支援するため、「あすかオーナー制度」という取り組みが行われています。
この制度では、会費を支払うことで棚田や酒、果樹などのオーナーになることができ、オーナーは田植えや稲刈り、収穫といった農作業を実際に体験することができます。
さらに、地元農家からの栽培指導を受けることもできるため、若者たちが農業に関心を持ち、参加することで地域の農業を活性化させる一助となっているようです。
この取り組みにより、明日香村では高齢化や人口減少による耕作放棄地や遊休農地の増加を食い止めることができました。

鳥取県「とっとり共生の森」

参照元:「島根県 とりネット

とっとり共生の森は、鳥取県と市町村が協力して環境貢献活動を推進する取り組みです。
県と地元の市町村が連携して森林所有者と企業の間の架け橋となり、森林保全・管理協定を締結することで、地元との調整や企業による森林保全活動を支援しています。
この取り組みにより、森林保全に関心を持つ企業やNPOが積極的に参加し、森林の持続可能な管理や保護に貢献することができました。
また、地元の市町村との連携により、地域のニーズや課題に合わせた活動が展開され、持続可能な森林資源の確保や生態系の保全に寄与しています。

愛媛県西条市「Love Saijoファンクラブ」

参照元:「LOVE SAIJO

愛媛県西条市では、SNSを通じて市民と関係人口のつながりを強化することで、棚田の保全や里山の復興、特産品の開発に取り組んでいます。
市民と関係人口との間で意見やアイデアが共有され、相互の協力や支援が行われることで、地域の魅力や活力の向上が図られ、関係人口の増加や地域の活性化につながっているといえます。

和歌山県「わかやましごと・くらし体験」

参照元:「わかやまLIFE しごと・くらし体験

「わかやましごと・くらし体験」では、農家民宿などの施設に滞在しながら、実際に地域での仕事や生活を体験することができます。
コースは最大2泊3日の「起業・就農コース」と、最大5泊6日の「就労コース」が用意されており、参加者は100を超える事業所から様々な業種を選択します。
実際の仕事や地域の暮らしを経験することで、移住者の理解が高まり、地域の活性化や定住者の増加につなげられています。

北海道伊達市「心の伊達市民」

参照元:「北海道 伊達市

北海道伊達市では、地域を支援する「心の伊達市民」というネットワークを形成しています。
この取り組みは、市民以外の誰でも登録することができる「心の伊達市民」となることで、さまざまな特典を受けることができるというものです。
「心の伊達市民」に登録すると、「心の伊達市民住民票」や「心の伊達市民」名刺、年に2回の情報誌が届けられるほか、「心の伊達市民税(会費)」を納めることで、特産品が定期的に届く特典もあります。
移住を検討している人にとっても、伊達市の魅力や特産品を体験する機会となり、地域への関心や支援意識を高めることで、伊達市の発展に寄与しています。

まとめ

地方にはまだ知られていない魅力が数多く存在します。
特産品や文化、風景などを積極的に発信し、関心を持った人々とのつながりを広げましょう。
さらに、地域の魅力を共有することで、熱烈なファンを増やすことも可能です。
地方の振興や発展には、移住は絶対条件ではありません。
関係人口として、地域との深い結びつきを持つ人を増やすことが重要です。

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関係人口施策についてご検討でございましたらぜひご相談ください。

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