経済大国であるアメリカからの観光客数は、2019年まで年々増加を続けていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症が世界中で流行し、2021年時点にはその数は約2万人にまで減少しました。昨年以降、水際対策の緩和が講じられ回復の兆しを見せつつあるものの、コロナ前の水準にまで戻るにはもうしばらくの時間が必要だといえそうです。
この記事では、2013年から2023年までの訪日アメリカ人のデータをまとめています。ポストコロナにおけるインバウンド活用のヒントとしてお役立てください。
この記事でわかること
- 訪日アメリカ人の特徴
- アメリカからの訪日旅行データ
- インバウンド消費の推移
こんな方におすすめ
- 訪日外国人客の誘致に取り組んでいる
- 日本を訪れるアメリカ人観光客のデータを知りたい
- ポストコロナにおけるインバウンド施策のヒントを得たい
訪日アメリカ人の4つの特徴
まずは、インバウンド消費の要となるアメリカ人観光客の4つの特徴について解説します。
以下の情報は、国土交通省観光庁の「訪日外国人の消費動向 2022年 年次報告書」に基づいています。
ハイシーズン
訪日するアメリカ人観光客の多くは、夏の長期休暇を利用して日本を訪れる傾向にあります。
滞在日数
アメリカ人観光客の平均滞在日数は9.7日と算出されています。1週から2週ほどの期間で観光する人が多い傾向にあります。
リピーター率
訪日アメリカ人の訪問回数は、「1回目」と回答した割合が57%も占める結果(2019年時)となり、リピーター獲得のチャンスが眠っていることがわかります。
主目的
2022年の訪日目的は「観光・レジャー」が32.6%、「業務」が43.0%、「その他」が24.4%という結果でした。
アメリカからの訪日旅行データ
続いては、アメリカからの訪日旅行データを「日本政府観光局(JNTO)」の資料から見ていきましょう。
訪日外客数推移(2013年~2023年):訪日アメリカ人は何人来ているのか
2013年から2019年まで、前年比10%~20%を維持して増加を続けている点が特徴的です。
累計 | 前年比 | |
---|---|---|
2013年 | 799,280人 | 11.5% |
2014年 | 891,668人 | 11.6% |
2015年 | 1,033,258人 | 15.9% |
2016年 | 1,242,719人 | 20.3% |
2017年 | 1,374,964人 | 10.6% |
2018年 | 1,526,407人 | 11.0% |
2019年 | 1,723,861人 | 12.9% |
2020年 | 219,307人 | -87.3% |
2021年 | 20,026人 | -90.9% |
2022年 | 323,513人 | 1,515.5% |
2023年(1月~4月のみ) | 562,000人 | - |
ポストコロナの訪日観光客推移
訪日観光客は2019年まで増加を続けていましたが、新型コロナウィルスの影響により2020年頃より減少傾向となっています。その後、防疫措置の緩和が図られた2022年から回復の兆しを見せています。
累計 | 前年比 | |
---|---|---|
2013年 | 10,363,904人 | 24.0% |
2014年 | 13,413,467人 | 29.4% |
2015年 | 19,737,409人 | 47.1% |
2016年 | 24,039,700人 | 21.8% |
2017年 | 28,691,073人 | 19.3% |
2018年 | 31,191,856人 | 8.7% |
2019年 | 31,882,049人 | 2.2% |
2020年 | 4,115,828人 | -87.1% |
2021年 | 245,862人 | -94.0% |
2022年 | 3,832,110人 | 1,458.6% |
2023年(1月~4月のみ) | 6,739,500人 | - |
月別訪日外客数:ハイシーズンはいつなのか
アメリカからの訪日観光客数を見ると、アメリカのほとんどの学校の夏休みスタート時期となる6月の訪日客数が例年多いことがわかります。
また、桜の開花時期となる3・4月も人気の時期となっているようです。
1番多い月 | 2番目に多い月 | |
---|---|---|
2013年 | 6月(81,290人) | 3月(75,506人) |
2014年 | 6月(87,870人) | 4月(85,298人) |
2015年 | 6月(102,103人) | 7月(98,201人) |
2016年 | 6月(125,353人) | 10月(119,477人) |
2017年 | 4月(141,090人) | 6月(137,985人) |
2018年 | 6月(161,736人) | 3月(150,964人) |
2019年 | 3月(176,564人) | 6月(175,491人) |
2020年 | 1月(117,343人) | 2月(73,373人) |
2021年 | 7月(6,139人) | 8月(2,981人) |
2022年 | 12月(109,484人) | 11月(84,289人) |
2023年(1月~4月のみ) | 3月(203,000人) | 4月(183,900人) |
インバウンド消費
「インバウンド消費」とは、日本国内における訪日外国人観光客の消費活動のことを意味しています。
インバウンド消費額推移(2014年~2023年):アメリカ市場全体の規模は?
インバウンド消費額は2019年まで前年比10%~20%の伸び率を維持して増加を続けていたことがわかります。
*新型コロナウイルス感染症の影響により調査が中止されたため試算値および不明となっているデータ
訪日アメリカ人旅行者の消費額 | 前年比 | |
---|---|---|
2014年 | 1,475億円 | 8.3% |
2015年 | 1,814億円 | 23.0% |
2016年 | 2,130億円 | 17.4% |
2017年 | 2,503億円 | 17.5% |
2018年 | 2,893億円 | 15.6% |
2019年 | 3,222億円 | 11.6% |
2020年 | 456億円* | -85.8% |
2021年 | 不明(全体で1,208億円*) | ー |
2022年 | 959億円* | -70.3%(2019年比) |
2023年(1月~3月のみ) | 977億円 | -70.0%(2019年比) |
一人当たりインバウンド消費額推移(2013年~2023年):訪日アメリカ人は1人いくら使う?
コロナ以前、1人当たり消費額は少しずつ上昇する推移となっていました。コロナ期の縮小はあったものの、2023年には250,000円を超える結果が算出されています。
*新型コロナウイルス感染症の影響により調査が中止されたため試算値および不明となっているデータ
訪日アメリカ人旅行者の1人当たり旅行支出 | 前年比 | |
---|---|---|
2014年 | 165,381円 | -2.9% |
2015年 | 175,554円 | 6.2% |
2016年 | 171,418円 | -2.4% |
2017年 | 182,071円 | 6.2% |
2018年 | 191,539円 | 5.2% |
2019年 | 189,411円 | -1.1% |
2020年 | 208,402円* | 10.0% |
2021年 | 不明 | ー |
2022年 | 不明(全国籍で234,524円*) | 47.9%(2019年比) |
2023年(1月~3月のみ) | 258,690円 | 53.6%(2019年比) |
ポストコロナのインバウンド消費推移
コロナ以前ではインバウンド消費額が年々増加する推移となっていましたが、コロナ期において大幅に減少しました。インバウンド消費の縮小も心配されましたが、2023年の1月から3月には既に1兆を超える額を記録しており、回復の兆しが見てとれます。
*新型コロナウイルス感染症の影響により調査が中止されたため試算値および不明となっているデータ
訪日外国人旅行者の消費額 | 前年比 | |
---|---|---|
2014年 | 2兆278億円 | ー(2013年と計算方法が異なるため省略) |
2015年 | 3兆4,771億円 | 71.5% |
2016年 | 3兆7,476億円 | 7.8% |
2017年 | 4兆4,162億円 | 17.8% |
2018年 | 4兆5,189億円 | 2.3% |
2019年 | 4兆8,135億円 | 6.5% |
2020年 | 7,446億円* | -84.5%(2019年比) |
2021年 | 1,208億円* | -97.5%(2019年比) |
2022年 | 8,987億円* | -81.3%(2019年比) |
2023年(1月~3月のみ) | 1兆146億円 | -78.9%(2019年比) |
旅行支出内訳:訪日アメリカ人は何を買い、消費している?
訪日アメリカ人の支出割合では、突出して宿泊料金が大きな割合を占めていることが特徴的です。
旅行支出総額 | 宿泊料金 | 飲食費 | 交通費 | 娯楽サービス費 | 買い物代 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2014年 | 165,381円 | 71,783円 | 42,343円 | 24,481円 | 3,564円 | 22,905円 | 306円 |
2015年 | 175,554円 | 74,017円 | 40,889円 | 25,465円 | 5,883円 | 29,247円 | 53円 |
2016年 | 171,418円 | 70,707円 | 41,137円 | 27,856円 | 5,427円 | 26,111円 | 180円 |
2017年 | 182,071円 | 76,719円 | 41,791円 | 28,477円 | 6,603円 | 28,071円 | 411円 |
2018年 | 191,539円 | 82,286円 | 50,630円 | 27,318円 | 7,865円 | 23,406円 | 34円 |
2019年 | 189,411円 | 83,125円 | 48,279円 | 26,014円 | 8,692円 | 23,218円 | 83円 |
2020年 | 208,402円* | 不明 | |||||
2021年 | 不明 | ||||||
2022年 | 不明(全国籍で234,524円*) | 不明 | |||||
2023年(1月~3月のみ) | 258,690円 | 113,646円 | 58,470円 | 33,607円 | 14,739円 | 38,228円 | 0円 |
人気のお土産ものランキング:訪日アメリカ人は何をお土産に買っていく?
観光目的で日本を訪れたアメリカ人の費目別での購入単価(2019年時)を見てみると、「時計・フィルムカメラ」が他の品目より多いという結果でした。
そして、お土産等の買い物よりも、宿泊料金やレンタカー代、レジャー施設への支出が多いのも訪日アメリカ人の特徴だといえそうです*。
買い物場所ランキング:訪日アメリカ人はどこで買い物をしている?
観光目的で日本を訪れたアメリカ人は例年、コンビニエンスストアでの買い物が多いことがわかりました。
次いで、百貨店・デパート、観光地の土産店での買い物が上位に該当しています*。
訪日アメリカ人の属性とは?
以下の情報は、国土交通省観光庁の「訪日外国人の消費動向 2022年 年次報告書」に基づいています。
年齢・性別構成比
訪日アメリカ人の年代は30代が最も多く23.7%という結果になりましたが、どの年代も同等の割合を占めている点が特徴的です。
20代以下 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代以上 |
---|---|---|---|---|
21.5% | 23.7% | 20.8% | 18.1% | 16.0% |
滞在日数
平均滞在日数は9.7日となり、最も多い滞在日数は7~13日間、次いで14日以上と長期的に滞在する人が多いという結果になりました。
3日間以内 | 4~6日間 | 7~13日間 | 14日間以上 |
---|---|---|---|
5.9% | 22.6% | 41.8% | 29.7% |
訪日経験
訪日経験については、1回目(初来日)と回答した割合が最も多い結果となりました。今後のインバウンド施策において、リピーター獲得のチャンスが眠っているといえそうです。
1回目 | 2回目 | 3回目 | 4~9回目 | 10回目以上 |
---|---|---|---|---|
57.0% | 14.1% | 8.5% | 13.2% | 7.2% |
旅行形態
旅行に訪れる際の手段としては、個別手配が最も多く、少数ではあるものの団体ツアーや個人旅行パッケージを利用する人もいることがわかりました。
団体ツアー参加 | 個人旅行パッケージ利用 | 個別手配 |
---|---|---|
7.0% | 4.9% | 88.0% |
訪日旅行の情報手段
出発前に役に立った旅行情報源
日本在住の親族・知人 | SNS | 動画サイト |
---|---|---|
22.8% | 21.9% | 21.4% |
日本滞在中に役に立った旅行情報源
スマートフォン | 日本在住の親族・知人 | パソコン・タブレット端末 |
---|---|---|
84.7% | 18.7% | 14.3% |
ポストコロナにおけるアメリカ人訪日客の動向
水際対策の緩和が講じられて以降、海外からの訪日客は再び戻りつつあります。2023年に突入してからの回復の兆しは目覚ましいものがあります。
回復の兆しはアメリカ人訪日客にも当てはまるものであり、特に、アメリカ人訪日客は初来日という人も多いです。インバウンドの回復の勢いを活かしていくにあたっては、初来日の観光客をリピーターにつけていく策が効果的といえるでしょう。
また、滞在日数においては2週間ほどの長期的な休暇を活用した形で観光に訪れる人が多いのも特徴です。日本の名所を巡るツアーや、短期の観光では難しく諸条件が上手く重ならないと望むことのできない景観スポットへの案内など、長期間滞在することを活かした策を講じることが有効といえそうです。
まとめ
コロナ以前のアメリカからの観光客は年々増加傾向にありました。コロナの流行拡大によって一時はインバウンド消費が縮減する形となりましたが、水際対策の緩和によって再びその勢いは戻りつつあります。
日本全体としても、地方自治体としてもインバウンド消費を活かすことは経済回復において重要な施策になると位置付けられており、その動向は益々勢力的になるといえます。
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