訪日外国人観光客数は回復・増加の一途をたどり、観光地に再び賑わいが戻りつつあります。その一方で、静かな街角や地方の小さな店を訪ね歩く旅行者の姿も増えています。観光のトレンドは急速に変化しており、彼らが今求めるのは、ガイドブックに載った「ゴールデンルート」ではなく、人混みを避け、地域の日常に深く触れるパーソナルな体験です。
本記事では、古着、レコード、喫茶といった日本ならではの”ローカル文化”を通じて、これからのインバウンド市場で求められる新しい価値観と、インバウンド事業者が取るべき戦略の方向性を考察します。
観光消費の転換期:なぜ「日本の隠れ家文化」が注目されるのか
訪日市場の回復が進むなか、今、観光のあり方そのものが変わり始めています。日本のインバウンド市場は、「量」から「質」へと大きく舵を切り、”どのように日本を体験するか”が重視される時代へと移行しています。
旅行者があえて小さなレコード店や、雑居ビルの一室にある古着屋など、観光地化されていない場所に足を運ぶようになった背景には、現代の旅行者が持つ価値観の変化があります。
- パーソナルな体験の追求:大勢の観光客と同じ場所を訪れるのではなく、「自分だけの発見や物語」を体験したい。店主との何気ない会話や偶然の出会いが旅のハイライトとなり、「ここでしか得られない時間」にこそ価値を見出しています。
- サステナブルな消費への共感:古着やレコードといった循環型の消費は、欧米豪を中心に高まる環境意識と共鳴しています。それは単なる買い物ではなく、文化や歴史を継承する行動としての意味を持っています。
- 心を整える旅の価値:都市の喧騒や情報過多から距離を置き、落ち着いた時間に価値を感じる人々が増えています。人混みを避け、ゆったりとした空気の中で日本の美意識に触れる旅こそが「隠れ家文化」が注目を集める理由のひとつです。
密かに注目されるローカルに根付いたディープな体験の聖地
こうした深く味わう旅の舞台は、もはや東京や京都といった大都市だけではありません。地方都市や地域コミュニティに根付いた文化こそが、新たな日本の魅力として注目されています。そこには、日常の中に静かに息づくローカル体験の豊かさがあります。
レコード文化:「シティポップ」と「ジャズ喫茶」が根付く地方の音の隠れ家
世界的なシティポップ人気を背景に、日本のレコード店は海外の音楽ファンの聖地となりつつあります。特に地方都市の路地裏にある小さな専門店や、昔ながらのジャズ喫茶では、オーナーが選び抜いた1枚を通して、音と時間をゆっくり味わう贅沢を体験できます。
古着文化:独自の進化を遂げた地方都市のヴィンテージ宝庫
日本の古着文化は、その品質の高さと繊細なメンテナンス技術によって、世界中のファンを惹きつけています。特に地方の古着店は、大都市とは異なる独自の審美眼とセレクトでその土地ならではのファッション感覚と文化背景を表現しています。
訪れる人々は、服の修繕技術や経年変化の美しさに触れながら、日本の職人文化に息づく「ものを大切にする精神」を感じ取っています。それは、単なる買い物ではなく、文化を受け継ぐ体験でもあります。
カフェ・喫茶文化:地域に溶け込むサードプレイスの魅力
日本のカフェや喫茶文化は、単なる休憩場所ではなく、地域住民の生活に深く溶け込んだサードプレイスとして発展してきました。地方の古民家を改装したカフェや、長年愛され続ける老舗喫茶店では、洗練された空間デザインと、控えめで温かなおもてなしが、訪れる人を魅了しています。
「静」と「ユニークネス」が共存するローカルスポット
文化圏だけでなく、いま注目を集めているのは、人混みを避けながらも地域の個性を感じられるローカルスポットです。
招き猫の聖地:豪徳寺(東京)に見る「静とユニークの共存」
東京・世田谷にある豪徳寺は、圧倒的な数の招き猫が並ぶフォトジェニックな光景で知られています。それでいて、観光地化された名所とは異なり、境内には穏やな空気が漂います。訪れる人々は、日本の縁起物文化に触れながら、人目を気にせず、心を整える時間を楽しんでいます。
地方に広がる「何もしない贅沢」
地方には、まだ知られていない“静かな名所”が数多く残っています。ローカル線が走る風景、人里離れた渓谷、地域の人々によって守られてきた小さな美術館など。こうした場所では、日本の自然や生活文化が、観光のためではなく、暮らしの延長線上に息づいています。派手な観光では得られない、“心の余白”を感じる旅こそがこれからのインバウンド観光を語る上で欠かせない要素となりつつあります。
「隠れた魅力」を訪日旅行者に届けるプロモーション戦略
こうした「ローカル文化体験」を求める旅行者に対して、私たちはどのようにアプローチし、魅力を伝えていくべきでしょうか?
ニッチなKOL/KOC戦略:信頼でつなぐ文化発信
古着、音楽、カフェなど、特定の文化に深い知見と発信力を持つ外国人インフルエンサー(KOL/KOC)を選定し、彼らのコミュニティを通じて発信します。
広告的な拡散ではなく、リアルな共感による波及効果を重視し、「密かに、しかし確実に」届くプロモーションを実現します。

ストーリーテリングによる文化発信:背景を伝えるコンテンツ設計
ENGAWAが最も重視するのは、背景を語ることです。単なる観光地紹介ではなく、「なぜこの土地でこの文化が生まれたのか」「誰がそれを守り続けているのか」を掘り下げ、地域の文脈を伝える多言語コンテンツを制作します。旅行者が訪れる理由だけでなく、心でつながる理由を持てるようにすることが目的です。

富裕層・文化層へのダイレクトリーチ:持続的なファンづくりへ
ENGAWAは、国内外のハイエンド層・文化層ネットワークを活かし、質の高い旅と文化を求める層に直接リーチします。単発的なPRではなく、「文化理解×購買意欲」を兼ね備えた顧客層をターゲットに、長期的なファン化を目指すマーケティングを展開します。

まとめ:ローカル体験と文化価値が導く、次のインバウンド戦略へ
2025年のインバウンド市場は、どう日本を感じるかへと価値の軸が変化しつつあります。旅行者は、名所を巡る観光から一歩踏み込み、地域の文化や生活に触れる体験を求めています。
その中心にあるのが、全国各地に息づくローカル文化。古着、レコード、喫茶といった日常に根付いたカルチャーは、華やかな観光とは異なるリアルな日本を伝えるコンテンツとして、世界のリピーター層や文化感度の高い旅行者を惹きつけています。
これからのインバウンド戦略で求められるのは、観光地を「集客の場」としてだけではなく、文化を体験する入り口として設計すること。
そしてその魅力を、共感と文脈を伴って伝えることです。
ENGAWAは、そうした地域固有の価値を可視化し、ストーリーとデータの両面から戦略的に発信することで、世界のリピーター層と地域をつなぐ架け橋となります。
訪日外国人向けプロモーションをご検討の方へ
ENGAWA株式会社では、自社英語メディア「Tokyo Weekender」をはじめ、世界15ヵ国・地域22拠点の海外支社と連携しながら、国内外のKOLやインフルエンサーを起用したプロモーションが可能です。各国の最適なプロモーション手法の選定や、社内のネイティブスタッフによるコンテンツ企画、撮影投稿制作ディレクション、SNS広告運用など、ネイティブ視点で対象国のトレンドやニーズに合わせた最適なプロモーション施策をご提案いたします。
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