日本政府観光局(JNTO)が発表した最新の調査資料に基づき、「訪日外客数の推移調査(2026年5月月報)」の概要をご紹介します。
2026年5月は、桜シーズンと夏休みシーズンの間にあたる端境期でありながら、祝日やスクールホリデーを背景に多くの市場で訪日需要が底堅さを示した月となりました。前年同月比での増減の背景には、端午節の期ずれや航空便の変動、新興市場における構造的な需要拡大など、複数の要因が絡み合っています。
本記事では最新データをもとに日本全体および国・地域別の動向を整理し、現在のインバウンド市場がどのような局面を迎えているのか、今後のプロモーションのヒントとなる動きを読み解きます。
日本全体の訪日外国人入国者数推移
2026年5月の訪日外客数は3,559,900人(前年同月比3.6%減)となりました。前年同月は下回ったものの、19市場が5月として過去最高を記録。1〜5月の累計でも17,936,000人(前年同期比1.1%減)と、ほぼ前年並みの高い水準を維持しています。
当月の動きを読み解くポイントは以下の3点です。
- 端境期でも底堅い訪日需要: 5月は桜と夏休みの間にあたる谷間の時期ですが、祝日やスクールホリデーに合わせた需要が各市場で見られ、韓国・台湾・米国・マレーシアなど19市場が5月として過去最高を更新しました。
- 新興市場の急拡大: 中東地域(前年同月比67.8%増)とインド(同31.3%増)がいずれも単月過去最高を記録。イスラム教祝日の期ずれや航空路線の拡充が追い風となり、訪日需要の地理的な広がりが鮮明になっています。
- 中国市場の減速と、進む多極化: 中国は渡航注意喚起や減便、端午節の期ずれ(前年5月末→今年6月中旬)の影響で前年同月比60.4%減と大幅な減少が続いています。しかし、中国を除く他市場が堅調なため、特定の市場に依存しない「市場構造の多極化」が定着しつつあることがうかがえます。
国・地域別の訪日外国人入国者数
2026年5月は、新興市場の急成長と中国市場の構造的な減速が同時に進行する結果となりました。東アジアでは韓国・台湾が2桁成長を維持する一方、東南アジア・中東・インドなどで過去最高が相次いでいます。値を押し下げています。
上位主要国・地域の訪日外客数は以下の通りです。
- 韓国:951,300人(前年同月比15.2%増)
- 台湾:616,800人(前年同月比14.6%増)
- 米国:333,700人(前年同月比7.0%増)
- 中国:313,000人(前年同月比60.4%減)
- 香港:207,900人(前年同月比7.7%増)
それでは、国・地域別の詳細な動向を見ていきましょう。
- 韓国
5月の訪日外客数は951,300人(前年同月比15.2%増)。航空座席数の拡大が続く中、祝日の配置にも恵まれ、5月として過去最高を更新しました。1〜5月累計では4,888,000人(前年同期比20.6%増)に達し、年間を通じて最大市場としての地位を一段と固めています。
- 中国
5月の訪日外客数は313,000人(前年同月比60.4%減)。渡航注意喚起の継続と航空便の減便に加え、前年は5月末にあった端午節が今年は6月中旬にずれたことで、訪日タイミングが後ろ倒しになった影響も重なりました。1〜5月累計では1,717,400人(前年同期比56.2%減)と、減少幅は依然として大きい状況です。
- 台湾
5月の訪日外客数は616,800人(前年同月比14.6%増)。日本のゴールデンウィーク期間を避ける訪日パターンが定着しつつある中でも、航空座席数の拡大と根強い旅行人気を背景に5月として過去最高を記録しました。1〜5月累計では3,301,800人(前年同期比22.3%増)と、韓国に次ぐ第2市場として着実に拡大しています。
- 米国
5月の訪日外客数は333,700人(前年同月比7.0%増)。桜シーズンの混雑や夏場の暑さを避けて5月に訪日するという旅行パターンが広がりつつあり、5月として過去最高を記録しました。1〜5月累計では1,467,200人(前年同期比8.2%増)と、安定した成長が続いています。
- 香港
5月の訪日外客数は207,900人(前年同月比7.7%増)。航空座席数は前年より減少したものの、祝日に合わせた訪日需要が押し上げ要因となり前年同月を上回りました。1〜5月累計では1,084,200人(前年同期比1.8%減)と、ほぼ前年並みの水準で推移しています。
訪日外国人旅行消費額の動向
2025年の訪日外国人旅行消費額(速報)は9兆4,559億円と推計され、2024年比で16.4%増となり、過去最高を更新しました。訪日客数の増加に加え、一人当たりの支出額が高水準で推移していることが、消費額全体の拡大につながっています。
国籍・地域別消費額
国籍・地域別では、中国が2兆26億円(構成比21.2%)で最も多く、台湾、韓国、米国、香港が続いています。全体消費額の約65%を占めており、上位市場が安定的に消費を支えている構造がうかがえます。
費目別消費額
費目別では、宿泊費が36.6%、買物代が27.0%、飲食費が21.9%の順となりました。宿泊費の構成比は増加傾向にあり、長期滞在や高付加価値な宿泊体験を選択する旅行者の増加が示唆されます。
一人当たり旅行支出
2025年の訪日外国人一人当たり旅行支出は22万9千円となりました。国・地域別に見ると、以下の市場が各費目で最も高い支出額を記録しています。
- 宿泊費:英国(19万3千円)
- 娯楽等サービス費:オーストラリア(3万5千円)
- 買物代:シンガポール(10万1千円)
欧米豪市場では宿泊費や体験型消費への支出が高い一方、アジア圏では引き続き買物需要の比重が高い傾向が見られます。

まとめ
2026年5月の訪日外客数は3,559,900人となり、前年同月比3.6%減ながら19市場が5月として過去最高を更新しました。端境期にもかかわらず、韓国15.2%増・台湾14.6%増と東アジアの主要市場が2桁成長を維持する一方、中東地域67.8%増・インド31.3%増がいずれも単月過去最高を記録し、訪日需要の裾野が新たな地域へと広がっています。
注目すべきは、中国市場の構造的減速(累計56.2%減)を韓国・台湾・東南アジア・欧米豪の成長が補い、市場全体としてほぼ前年並みの水準を維持している点です。訪日市場の送出国構造は明らかに変化しており、特定市場に依存するフェーズは終わりつつあります。今後は、新興市場の受入環境整備と航空路線の拡充を活かしたターゲットプロモーションが、インバウンド戦略の鍵を握るでしょう。

出典一覧
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年4月推計値)」(2026年5月20日発表)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」
- ・観光庁「訪日外国人消費動向調査(2025年速報)」



