訪日外国人観光客数は回復・増加を続け、2024年の旅行消費額は過去最高の8兆1,395億円、2025年には訪日客数が4,020万人に達すると予測されています。
注目すべきは量的拡大だけではありません。訪日客の約65%がリピーターとなり、旅行目的は「ゴールデンルートの名所巡り」から、日本ならではの体験価値を求める旅へとシフトしています。「地方分散」「長期滞在」「体験価値重視」が新たなキーワードです。
地域が持つ固有の資源 – 自然・伝統・風土・季節性が、今後のインバウンド集客を左右します。その中でも特に存在感を増しているのが、冬季限定の高付加価値コンテンツ「ウインタースポーツ」です。
インバウンドウインタースポーツ市場の現状
日本のスノーリゾートは、オーストラリア、欧米、アジアの富裕層を中心に急成長しています。
スノーリゾート消費の約90%がインバウンド
北海道・長野・新潟などの主要スノーリゾートエリアでは、冬季の旅行消費の9割が外国人客によるものです。
1日あたり消費額は日本人の約4倍
高価格帯の宿泊、レッスン、レンタル、ダイニングなど、”雪山×高付加価値体験”への投資が顕著です。
平均9日間の地域周遊・1日あたりの消費額は35%増
ウインタースポーツ旅行者の90%以上は、スキーやスノーボード後に他地域へ移動し平均9日間の追加滞在を行います。その際の1日あたり消費額は、スノーリゾート滞在時より約35%高く、全国への「周遊促進効果」が極めて大きいのが特徴です。
外国人が日本のウインタースポーツを選ぶ理由
では、なぜ海外の旅行者は、自国や他の国々にもスノーリゾートがあるにもかかわらず、日本を選ぶのでしょうか。
- 世界最高品質のパウダースノー「Japow(ジャパウ)」
日本の雪は「Japow(Japan + Powder Snow)」と呼ばれ、唯一無二のブランドです。シベリアからの寒気が日本海で水分を含み、山脈で一気に雪に変わる気候条件が生む軽く乾いたパウダースノーは、滑走性の高さ、転倒時の衝撃の少なさ、圧倒的な雪量を兼ね備え、他国では再現できない競争優位性を持っています。
- 長期滞在と高消費を生む構造
ウインタースポーツ客は「雪山」だけで完結しません。滑走後、日本各地を周遊しながらレストラン、旅館・ホテル、ショッピング、体験型コンテンツに積極的に消費し、ゲレンデだけでなく周辺地域まで経済効果が波及する構造を生んでいます。
- 温泉・文化体験との相性の良さ
「雪山×温泉×日本文化」の多層的な体験が一度に楽しめることが、日本のスノーリゾートの決定的な差別化ポイントです。雪山を滑り、温泉で疲れを癒し、郷土料理や日本酒を味わい、旅館で和のホスピタリティを体験する – 欧米アルプスや北米リゾートとは明確に異なる、文化価値を伴った滞在体験が訪日客の満足度を飛躍的に高めています。これは単なるアクティビティ観光ではなく、”冬にしか味わえない日本のライフスタイル体験”として強く支持されているのです。
ウインタースポーツで集客するための実践ポイント
では、実際にウインタースポーツをインバウンド集客に活かすには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
ポイント1:英語対応の徹底
言語の不安は最大の障壁です。ウェブサイトの多言語化、案内表示の多言語表記、スタッフの基本的英語対応、予約・決済の英語対応、外国人インストラクターを活用した英語スクールの整備が予約率に直結します。
ポイント2:海外OTAへの掲載と予約導線の整備
Booking.comやExpedia、Agodaなど海外OTAへの掲載、自社サイトでのオンライン予約・クレジットカード決済対応、スキーレッスンやレンタルのオンライン予約化が必須です。


ポイント3:スキー+温泉+文化体験のパッケージ化
複合的な体験価値が日本の最大の強みです。「スキー&温泉プラン」「スキー+地元グルメ巡り」「スキー+日本酒蔵見学」「スキー+文化体験」など、地域資源と組み合わせることで滞在時間・消費単価が大幅に伸びます。
ポイント4:SNSでの雪質・景観アピール
Instagram、YouTube、TikTokは訪日旅行の意思決定に重要です。パウダースノーの滑走動画、ドローン空撮、外国人の体験談、#Japow #SkiJapanなどのハッシュタグ戦略で、視覚的に「憧れ」を生み出します。

ポイント5:富裕層向けプランの開発
富裕層市場との相性は抜群です。プライベートガイド、ハイクラス宿泊施設、専用車送迎、プレミアムダイニング、滞在コンシェルジュサービスなど、価格競争ではなく”価値競争”で地域ブランドを押し上げます。
成功している地域の共通点
成功地域は、雪質を「Japow」としてブランド化し、英語対応・ハラール対応など国際基準の受け入れ体制を整え、スキー場単体ではなく温泉・食・文化・景観を統合的に発信しています。また、他地域のコピーではなく、自分たちの強みや地域性に根ざした独自性を磨き、世界の旅行者に選ばれる明確な理由をつくり出しています。
注意すべきリスクと課題
気候変動による降雪量減少リスクに対し、夏季・グリーンシーズンのアクティビティ開発や通年型リゾートへの転換が不可欠です。また、地価高騰や外資の土地買収、生活環境の変化など地域住民への影響に配慮し、地域との対話を重視した持続可能な観光運営が求められます。冬季依存を避けるため、春夏秋の観光コンテンツ強化や他業種との連携による収益平準化も重要です。
まとめ:ウインタースポーツが開く、地方インバウンドの未来
日本のウインタースポーツ市場は、国内需要の縮小とは対照的に、インバウンドによって新たな成長局面を迎えています。スノーリゾート消費の90%を占める訪日客、日本人の約4倍の高消費額、スキー後の長期滞在と周遊行動 – これらは、ウインタースポーツが地方経済を大きく動かすエンジンになり得ることを示しています。
重要なのは、世界でも稀な最高級の雪質という、他国には真似のできない自然資源を強みに、雪山でのアクティビティだけでなく温泉・食・文化といった地域全体の魅力を組み合わせて発信することです。
英語対応、海外OTA掲載、SNS発信、体験のパッケージ化、富裕層向けプランなど、今日から取り組める施策は数多くあります。日本の各地域の雪は、世界中の旅行者にとって次の「Japow」になる可能性を秘めています。
今後、インバウンドのウインタースポーツ市場はさらなる拡大が予測されています。日本の雪山は、単なる観光資源ではなく、地方経済を支える新たな柱になろうとしています。この変化を捉え、地域全体で戦略的に取り組むことで、持続可能で魅力的な冬の観光地を創り上げることができるでしょう。
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