自然と人を結ぶ、「アドベンチャーツーリズム」が導く次のインバウンド戦略

訪日需要が戻る一方で、単なる名所巡りでは満たされない旅行者が増えています。彼らが求めるのは、ガイドブックの「ゴールデンルート」ではなく、自然の中で身体を使い、地域の日常に深く触れるパーソナルで挑戦的な体験です。そうした価値観の転換が、観光を「見る」から「関わる」へと押し出しています。

本記事は、豊かな自然・歴史・文化が息づく日本において、なぜアドベンチャーツーリズム(AT)がインバウンドのトレンドとなっているのかを整理し、インバウンド事業者がこの動きを成果へと繋げるための戦略的方向性を考察します。

目次

観光消費の転換期:なぜ「アドベンチャーツーリズム」が注目されるのか

訪日市場の回復が進むなか、日本の観光戦略は「量」から「質」へと舵を切っています。2024年の訪日外客数は3,687万人と過去最高を記録し、地方や未開拓のエリアへの誘致、そして旅行者が”どのように日本を体験するか”が高付加価値化の焦点となっています。

旅行者が都市部の有名観光地だけでなく、山奥や離島へ足を運び、自然や文化体験に積極的に足を運ぶ背景には、旅を通じて自己を再発見したいという価値観の変化があります。旅は消費ではなく、”自己回復と成長の機会”へと変化しています。

  • 「パーソナルな体験」と「物語性」の追求: 大勢の観光客と同じ場所を巡るのではなく、”自分だけの発見や物語”を求める傾向が強まっています。ATTA(Adventure Travel Trade Association)の調査では、海外旅行者の67%がアドベンチャー要素に関心を示しており、地元ガイドとの深い対話や、予期せぬ自然との出会いが旅のハイライトとなっています。
  • 「サステナブルな消費」への共感: 欧米豪を中心に高まる環境意識を背景に、地域固有の自然・文化を尊重した体験が支持されています。DBJ・JTBFの調査(2024年)によると、訪日外国人旅行者の約7割がサステナブルツーリズムを重視しており、特にZ世代やミレニアル世代ではその意識が顕著です。使い捨てではない「未来に残す旅」を選ぶことが、旅行者の倫理的満足に繋がっています。
  • 「心の健康」を求める旅の価値: 都市の喧騒から離れ、五感を研ぎ澄ませて自然と向き合う時間に価値を見出す旅行者が増えています。ウェルネスを目的とした旅は、メンタルヘルスケアの手段として再評価され、カヤックやトレイルランなど身体を動かすアクティビティは、自然との対話を通じて自己成長や達成感をもたらします。

【データで見る】急成長するアドベンチャーツーリズム市場の可能性

新しい旅行者の価値観は、一過性のトレンドではなく、具体的なデータとして表れています。アドベンチャーツーリズム(AT)は、日本のインバウンド市場における高付加価値化の鍵であり、投資や事業拡大を検討する上で見逃せない成長分野です。

  • 巨大なグローバル市場の形成: Adventure Travel Trade Association(ATTA)の年次レポートによれば、海外旅行者の実に67%が旅にアドベンチャー要素を求めています。年々この割合は増加しており、「見る観光」だけでは満足できない層が主流になりつつあります。旅行者は、”記憶に残る物語としての体験”を求めており、日本の自然や・文化資源はそのニーズに適したポテンシャルを持っています。
  • 満たされない体験ニーズが市場を牽引: 世界全体では、2024年で市場規模が1.16兆ドルに達したと推定され、すでに巨大なグローバル市場が形成されています。これは、アドベンチャーツーリズムが一部の趣味層を超え、世界的な観光の主流に移行していることを示しています。日本がこの巨大市場で存在感を高める余地は十分にあります。
  • 高単価・地方貢献型の消費モデル: アドベンチャーツーリズムの旅行者は、一般的な観光客と比較して消費単価が極めて高いのが特徴です。人気のツアーは平均8泊で約44万円を消費し、その支出の多くが旅先の地域経済に直接的に還元される傾向があります。これは、オーバーツーリズム問題が叫ばれる中で、量よりも質を重視し、地域に深く貢献する持続可能な観光モデルとして、アドベンチャーツーリズムが非常に有効であることを意味します。

※1ドル=150円換算で算出(2025年10月現在の想定レートに基づく)

これらのデータは、ATが世界の観光市場を牽引するメインストリームであること、日本が「観光立国」として次のステージへ進むためのエンジンとなることを示しています。

自然と文化が織りなす「アドベンチャーの舞台」

深く、濃密に味わう旅の舞台は、もはや東京や京都といった大都市だけではありません。地方のコミュニティに根付いた文化と雄大な自然こそが、高付加価値な日本の新たな魅力として注目されています。多様な気候・地形・文化を併せ持つ日本は、アドベンチャーツーリズム(AT)の舞台として計り知れない潜在能力を秘めています。

北海道:広大なパウダースノー、原生林、清流。2023年にアジア初開催となった「ATWS(Adventure Travel World Summit)」がそのポテンシャルを証明しました。ニセコでは、アクティビティとアイヌ文化体験が融合し、「自然×アクティビティ×文化」の理想形を体現しています。

沖縄:透き通る海でのダイビングやシュノーケリングに加え、琉球舞踊や泡盛蔵見学など古の文化が旅を彩ります。

長野: 日本アルプスの雄大さを背景に、パラグライダーやトレッキング、マウンテンバイクといったマウンテンアドベンチャーが人気。これに温泉文化や寺社巡りを組み合わせ、四季を通じて訪日客を魅了しています。

これらの事例は、日本の地域資源が「身体で味わうアクティビティ」と「文化との深い対話」を融合させることで、高単価で満足度の高いATコンテンツへと進化していることを示しています。

まとめ:「アドベンチャー体験」と「文化価値」が描く、次のインバウンド戦略へ

2025年以降のインバウンド市場では、旅行者の価値の軸が「モノや名所を巡る消費」から、「どう日本を感じ、何を得るか」というパーソナルな体験へと移行しています。旅行者が求めているのは、地域の文化や人々の暮らしに深く触れる体験、そして雄大な自然の中で自己変革を促すような冒険を求めているのです。

その中心にあるのが、全国各地の自然とローカル文化が融合したアドベンチャーツーリズム(AT)です。華やかな観光とは異なり、リアルな日本の魅力を伝えるこの体験は、世界のリピーター層や文化感度の高い富裕層を強く惹きつけています。ATは、一般的な観光客に比べて消費単価が高く、滞在期間も長い傾向にあり、その支出の多くが地域経済に直接還元されます。量ではなく質を重視する持続可能な観光モデルとしても、今後のさらに注目が高まる分野です。

これからのインバウンド戦略に求められるのは、観光地を単なる「集客の場」として扱うのではなく、自然や文化を体験し、自己変革を促す「冒険の入り口」として設計することです。そして、その魅力を、共感と背景を伴う物語として世界に伝えることが、成功への鍵となります。旅行者の心に深く刻まれる物語を紡ぎ、忘れられない体験を提供することこそが、次のインバウンド戦略の核心です。

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